令和2年12月12日(土)の午後に、川内村・いわなの郷体験交流館で、福島県内のワイン関係者によるる情報・意見交換会議とセミナーを開催しました。セミナーは現地参加が約30名(3密回避・コロナ対策を実施)、オンラインで約50名の方の参加がありました。セミナーでは、山梨大学ワイン科学研究センターの奥田先生を講師にお迎えし、「福島県がワイン産地となるための条件」についてお話をいただきました。
(1)大平圃場視察会(12時30分~1時15分)
川内村の醸造用ブドウ栽培を行っている大平圃場において、希望者に対して圃場の概要説明と建設中の醸造施設について、見学・説明会を実施しました。県内のワイン関係者、福島大学食農学類の教師・生徒など15名程度が参加。川内村産業振興課、かわうちワイン㈱から概要を説明いただきました。
(2)県内ワイン関係者による情報・意見交換会議(14時~15時)
(参加組織)かわうちワイン㈱、川内村産業振興課、コヤギファーム(南相馬)、田人ぶどう研究所(いわき)、遠藤ワイナリー(須賀川)、佐藤氏(伊達)、逢瀬ワイナリー(郡山)、アイプロダクツ(喜多方)、福島大学、山梨大学、福島県相双農林普及所、デロイトトーマツコンサルティング
・福島県内のブドウ栽培・ワイン関係者が現地及びオンラインで参加し、夫々の活動や事業の現況報告、意見交換を行いました。
・各地からの課題として、今年度は、鳥獣被害がひどかったこと、7月末までの長雨と日照不足について報告され、意見交換を行いました。鳥獣被害については、ハクビシン、ムクドリなど結局のところハンターなどの力も借りて個体数を減らすことが必要と考えられること、また天候不順に関しては、以下のような対応策について話あわれました。
・病気の特定と対応策の実施(圃場の衛生管理の徹底)
・レインガード、笠がけ
・病気に耐性のある品種への転換
(3)セミナー(15時15分~16時45分)
ふくしまワイン広域連携協議会・会長の小沢喜仁さま(福島大教授)と川内村村長である遠藤雄幸さまのご挨拶のあと、かわうちワイン㈱代表取締役猪狩貢さまから、「川内村ワイン事業について」の情報提供を頂きました。
続いて、山梨大学ワイン科学研究センター長の奥田徹先生の講演会「ふくしまがワイン産地になるための条件とは?」が実施されました。
奥田先生のご講演は、海外におけるワイン産地の形成を段階的に整理するとともに、ワイン産地により特徴的な品種や土地(自然環境:テロワール)によるワインのスタイルがあること、近年「Typicity(典型性)」という言葉で整理され、それは1つや2つのワイン生産者の存在で決まるものではないことなどが示されました。
続いて、会場参加者から幾つか質問があり、概ね以下のようなやりとりがありました。
Q1.産地としての基準(地理的表示)は、国内では一部適用されているものもあるが、好きなブドウを植える人が多いので海外のようにはいかないのではないか?
A1.早い段階でTypicity形成を意識してブドウ品種の絞り込みなども考える必要があるのではないか
Q2.Typicity に与える環境の微生物の許容、使い方について
A2.酵母の影響は重要であるが、特に最近注目されている地域の自然環境に伴う酵母・微生物の活用は構わないが、きちんとした品質管理を行い、ワインの品質を損ねないようにコントロールする技術が醸造段階で問われることになろう。
Q3.福島のワイン産地化のためには、自然環境や気候の違いによる括りを考えるべきか?それとも品種を意識した括りを考えるべきか?どのようなことを今後考えていくべきか?
A3.山梨県でも勝沼と明野では気候も違い、区別がされてきていることなどもふまえ、福島では山間の地域、海に近い地域など気候や土地を意識しながら、そこに適した品種を探り、地域間の相互連携・戦略を早い段階で共有していくことが必要ではないか?
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